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プロポーズのタイミング

幼いころから結婚願望が強かったわたし。
母が晩婚で高年齢出産だったため、若いママに憧れていました。
ところが、20代は趣味に夢中で毎日が楽しくて、恋愛とは縁遠い生活でした。
ふと気づけば30歳をとうに過ぎていて、「誰かいい人いないかなあ」が口癖に。
そんなある日、知人の紹介でひとつ年下の男性とデートをすることに。
それなりに楽しいひとときを過ごしたものの、正直ときめきはありませんでした。
2回目のデートのお誘いを断るほど嫌だったわけでもないので、再び会い、少しずつ彼の優しさに触れ、3回目・4回目と回を重ねるごとに気持ちが動いていきました。
燃え上がるような情熱的な恋ではないけれど、じんわりと心が温かくなる感じ。
5回目のデートの帰りに「付き合って下さい」と交際を申し込まれ、すぐに「はい」と答えました。
お互いに30代だし、最初から結婚を意識していました。
わたしの勝手な妄想ですが、お付き合い1周年記念日にプロポーズしてもらえたらな、なんて考えたり。
仕事が多忙な彼とは月に1回くらいしか会えませんでしたが、ケンカをすることもなく穏やかに順調に愛を育んでいました。
そんなある日、一人暮らしのわたしのマンションに、彼がお泊りしたときのことです。
シングルベッドに二人で寝ていて、朝方、彼が寝返りをひんぱんに打つので目が覚めました。
彼も起きている様子。
たわいもない会話を交わした後、再び眠りに落ちようとするわたし。
ごにょごにょと彼が何やらつぶやいています。
よく聞き取れなくて聞き返すと、「テッキンしようか」とかなんとか。
「え、何。鉄筋てなに」と眠気と闘いながら聞き返すとまた「テッキンしようか」と聞こえます。
「なに、鉄筋コンクリートのこと」うちのマンションの構造のことでも言っているのかと、その時は思いました。
「何でもない」と、彼は背を向けました。
わたしはそのまま眠りに落ちました。
再び目を覚ました頃には、そんなやりとりがあったことを、すっかり忘れていました。
それから数カ月が経ち、運命のお付き合い一周年記念日を迎えました。
平日だったのでその日は会えませんでしたが、週末に1泊で温泉旅行へ行きました。
わたしのプロポーズ期待度はMAXです。
素敵なお宿、温かい温泉、おいしいお料理。
十分に楽しんだけれど、見事に空振りに終わりました。
それから3か月、わたしは悶々とした日々を過ごしました。
一向にそんな兆しが見えません。
ますます仕事が多忙になった彼は、連絡もあまりしてこなくなりました。
たまに「見捨てないでね」と焦りのメールがくるけれど。
イライラが募ったわたしは、彼の気持ちがわからなくなりました。
クリスマス、もしくはわたしの誕生日まで待てばいいのかしら、なんて悩みました。
しかし、冷静に考えると、彼がそういった記念日に絡めたサプライズを考えるような、ロマンチストの男性ではないと、思い直しました。
と同時に、あの謎の「テッキンしようか」の記憶が蘇りました。
あれって、もしかして「ケッコンしようか」だったとか。
もしかして、もしかして。
いたたまれなくなったわたしは、ついに彼に切り出しました。
休日、またわたしのマンションで寛いでいたときです。
「将来のこと、考えてくれてるのかなあ」ドキドキしながら、床でごろごろしている彼にそう問いかけました。
彼はガバっと飛び起きました。
「考えてるよ」しっかり、そう答えてくれました。
わたしは素直にこれまでの気持ちを伝えました。
1周年記念の温泉旅行でプロポーズを期待していたこと、何もなくてがっかりしたこと。
あの明け方の謎の会話「テッキンしようか」が「ケッコンしようか」だったとしたら、せっかく彼が意を決してくれたのにスルーしてしまい、彼を傷つけたのではないかと反省していること。
彼は「いろいろ考えさせてごめん」とわたしを抱き寄せて「結婚しようか」と言ってくれました。
もちろん「はい」とすぐに応えました。
彼は、いつ、どんなタイミングで言えばいいのか、わからなかったそうです。
サプライズは苦手だし、ロマンチックなディナーは緊張するし。
そうこうしているうちに、時が過ぎていったとのことです。
「催促されてからのプロポーズのようになってしまってごめんね」と謝る彼に「あの『テッキンしようか』が、ほんとは『ケッコンしようか』だったんでしょ。だから、催促する前にされてたからいいの」と言うと、真顔で「それは違うよ」と否定されました。
「じゃああれはほんとは何だったの」と聞くと「覚えてない」そうです。
彼が照れて見栄を張って否定しているのか、ほんとに違うのか、今となってはわかりません。
でも、わたしはあれがほんとのプロポーズだと今でも信じています。
そして女性が待ち望むタイミングと、男性のタイミングはそううまく一致しないということを、結婚前に学べてよかったと思っています。

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