プレゼントイメージ

彼女が手にした萎れかけたプレゼント

友達以上、彼女未満の女性の誕生日に贈ったのは、真っ赤なバラの花束でした。
花言葉なんてそんな洒落たものなど知らなかった時代のことです。
何か誕生日にプレゼントを贈ろうと考えて思いついたのがバラの花であったというだけなのです。
自宅に贈ってもし、本人ではなく彼女の母親が受け取ってしまうことを恐れて、バラの花束は会社宛に送ったのです。
これが失敗の元でした。
これが多くの人を悩ませることになろうとは夢にも思わなかったのです。
もちろん、当人はその日体調が悪くて会社を休んでいたことなど知る由もありません。
真っ赤なバラの花束は、受取人不在の会社へ届けられたのです。
後から聞いたのですが、会社の同僚が気を回して何度も彼女の家に電話をかけてくれていたそうです。
会社からの仕事の電話であろうと思った本人は、仕事の話を聞いてますます具合が悪くなることを恐れて電話に出なかったと言います。
翌朝、ちっとも体調が回復しないそ当人は、その日も会社を休むと電話を入れたらしいのですが、運が良いのか悪いのか、電話に出たのは事情をまったく知らない彼女の上司でした。
その上司はこともあろうか、仕事が忙しくない時期でもあるから有給を取って数日休みなさいと、助言したそうなのです。
本人はありがたくその助言に従ったとは後から聞きました。
焦ったのは、その会社で一緒に働く女性達です。
当人は電話しても出ない。
バラはそのままにしておけばしおれてしまうと、随分気を揉んだそうです。
結局枯れるよりは良かろうと、バラの花は花瓶に生けられることになったと言います。
プレゼントの受け取り手が会社に現れたのは、それから数日後のことでした。
バラが傷まないように、様々な手立てを講じてくれた会社の方には本当に頭が下がります。
1年後、その話を聞いたのは結婚式の雛壇の上でした。
彼女の会社の友人のスピーチで初めて知ったのです。
それまでは疑うことなく、バラの花束は本人の手元に届いたと思っていたのですから。
その時まで、本人が萎れかけた花束を自宅に持ち帰ったなんてことは夢にも思って居なかったのです。
今度の結婚記念日には、新鮮な真っ赤なバラの花束を贈ろうかと今から思っているのです。

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