プレゼントイメージ

高校生のプレゼントと聞いて思い出すこと

彼が駅前で声を掛けてきたのは休日の午後であったと思います。
彼の名を仮にAとすると、Aは当時通っていた高校だけでなく、県下でも有名なスポーツ選手でした。
雑誌に掲載される雄姿を見て羨ましく思ったことは一度や二度ではありません。
無論こちらは、何のとりえも無い高校生でした。
こちらはAのことは良く知っていましたが、Aはこちらのことを同じ学校に通う学生である、程度の認識しかなかったはずです。
それまで一度も会話した事もなかったのです。
そんな彼が、声をかけて来たのですから、不思議に思うのもとうぜんでしょう。
またAは声をかけてきたものの、何がしたいのか要領を得なかったのです。
ようやく聞き出したところによると、どうやら女の子に贈るペンダントを買うのを付き合って欲しいということのようでした。
毎月のように雑誌に写真が掲載され、日々女性からキャーキャー言われているAが、もじもじしているのがおかしかったことを覚えています。
スポーツ誌は賑わせても、女性にはウブだったのかも知れません。
結局一緒にプレゼントを選ぶ事になったのです。
彼がプレゼントをあげる相手について口を開かなかったところを見ると、同じ学校の生徒だったのでしょう。
相手の顔が分からないと、ネックレスも選びようがないと、いうこちらのクレームにもまったく耳を貸さなかったのです。
結局随分時間をかけて選んだネックレスを彼がポケットにしまいこんで、不思議な買い物が終わりました。
そのネックレスは誰の首を飾ったのかは知りません。
当時は興味もありませんでした。
有名人もやはり同じ高校生なんだ、と改めて思ったものです。
また、プレゼントを贈ろうとする相手が居ることを少々羨ましく思ったものです。
先日数十年ぶりに高校の同窓会が開催され、これまた卒業以来初めてあったAにその時のことを聞いてみたのですが、Aは何も覚えては居ませんでした。
ネックレスを一緒に選んだことも、別れ際ぽつりとありがとうと言ったことも何にも覚えては居なかったのです。
買ったことも覚えていないくらいですから、誰にプレゼントしたかも記憶に無いようでした。
ひょっとしたら忘れたフリをしていたのではないかと思ったのは同窓会の翌日のことです。

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